名古屋「オーロックス」

玉子をつぶす。2

食べ歩き ,

同じ「玉子をつぶす」でも、これはコーフンがある。
味が想像できても、無性にコーフンしてしまうのはなぜだろう。
ジビーフとほうき鶏をまとめたハンバーグに、目玉焼きが乗せられている。
白身は泡立てて加熱され、黄身は半熟一歩手前で火が入れられていた。
君の登場をナイフで、そっと刺してやる。
とろん。とろり。
流れ出した黄身は、濃黄色の海となって、白き島々が海の上に顔を出す。
ハンバーグを切り、海や島とともに口に運ぶ。
ああその時の、ときめきといったら。
食べる前から美味しさは始まり、顔が崩れてしまう。
ジビーフが内包する優しい滋味と、ほうき鶏が持つ柔らかいうま味が抱き合って、玉子の甘みと出会う。
その瞬間僕は、体の力が抜け、幸せが忍び寄るのを感じる。