生きている”走る豚”と”草原あか牛”を訪ね、生態を学び、夜は熊本市内の「コントルノ牧場」と「アンティカロカンダミヤモト」で、走る豚とあか牛を食べる二日間の旅が終わった。
牧場を見て、その肉を食べる。
命の尊さが身に沁みました。
とは、言わない。
自分自身に命の尊さなど、どこまで理解できるのかという恐れ多さがあるからである。
ただ気づかされたのは、いくら都会に住んでいようと、人間は自然物であるということであった。
たがら人間は、自然と繋がっていなくてはいけない。
自然に頼らなくては、生きていけない。
そのことを、つい忘れがちになる。
宮本さんが薪火で焼いた、ビステッカが出された。
焼いて、休ませずに切って皿に盛る。
表面の焦げ色は凛々しく、断面は艶めかしい。
牛の息吹が表出して、「お前に私が食べられるのかい?」 と、問うてくる。
噛めば、ガリッと表皮が音を立てて香ばしく、中心まで熱々の中は、生肉に似たしとやかさがある。
その対比が、一層肉の躍動を伝える。
肉のエキスが、体に充満していく。
命を経って、我々の命を育む。
その現実を叩きつけるかのように、胃袋へ去っていく肉から熟成香が立ち上って、いつまでもいつまでも口の中に留まった。
熊本「「アンティカロカンダミヤモト」にて。
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