焼き鳥を食べると、血が騒ぐ。
その事に気づいたのが、「バードランド」である。
元々焼き鳥は、串を手づかみでほおばる様が、骨持ち肉齧る姿にも似て、コーフン気味となる。
さらにそこを、才ある焼き師は焚きつける。
「肉汁に富む」、「ジューシー」という表現には、もはや当てはまらない。
和田さんが焼く鳥を噛みしめれば、肉汁が爆ぜて、生き生きと舌に刺し込んでくるのである。
口中で、第二の生を受けたかのように、鶏肉が躍動するのである。
それは、明確に描いた仕上がりの理想に近づけるため、他人より一歩も二歩も踏み込んで焼き上げた、勇気の滋味だ。
さらには、ネギマも皮も、砂肝もレバーも、巧みに仕込まれた食感と香りのアクセントがあって、噛みしめるほどに、顔は崩れ、上気する。
後は、赤ワインでコーフンを増幅させるか、白ワインで妖艶に着地するかは、あなた次第。
「江戸政」も、血が騒ぐ店である。
店の前に立つ。隅田川から吹く風の匂いとタレの香りが入り混じる。もう、たまりません。
串がいい。短めな串に、大ぶりな肉が身を寄せ合い、これでもかと盛り上がっている。
人はこの光景を見て、むふふと笑わずにはいられない。
大口開けて齧りつけば、肉のうま味とタレの甘辛味が、流れ込む。
ほおばる喜びが、ここにある。「肉を食らう」という醍醐味がある。
ネギマのもも肉。ハツなど様々な肉が刺された、ハートスタミナ。三代目独自の工夫で、甘く香るもつ。心臓の筋だというフジ。皮のミルフューユ団子のかわ。
ええい、どの部位がどうのなんて詮索は野暮だ。
黙々と串にかぶりつき、酒を飲み、うまいと叫ぶ。内なる野性を開放し、大いに食らう。
それでいい。後はひんやりとした川風が、騒いだ血を、なだめてくれる。