港区の某フレンチ裏メニュー「猪鍋」

食べ歩き ,

港区の某フレンチ裏メニュー「猪鍋」。
出汁は、自家製猪生ハムの骨と筋などを3日間煮出したもの。
スープガルビィユと同じ手法ながら、獣である猪のそれは豚と違う。
茶濁し、塩を含め一切の調味料を入れていないのに、
醤油や味噌のような熟成した塩分が湧き出ている。
そこに脂のコク、大腸や小腸の脂から溶け出した脂の甘みが加わるのだからたまらない。
一口飲んで「はあー」と充足のため息をつき、
二口飲んでは「ふうーうまい」呟き、鍋を囲む人間が無口となる。
食べる人の精力が試される、野生の生命力に満ちていて、
恐らく体の弱っている人は、受け付けないだろう。
凛々しく豪胆なうまみを吸った根菜類もしみじみとうまい。
食べるたびに体は上気し、細胞が焚きつけられる。
現に、今この朝の時点で胃袋がポカポカとしているだもの。
おそるべし。
ああ、早くも年末が待ち遠しい。
知ってはいけない聖域に踏み入ってしまった。