沖縄の魚は、おいしくないと皆が言う。
確かに脂はのってないし、身は緩いものが多い。
しかしそれは、人間のエゴである。
脂の強い魚に慣れた、人間のワガママである。
いつもより多く噛むと、沖縄の魚は答えてくれる。
甘みをじっとりと出し始めるのだ。
そんな”おいしくない”と言われる沖縄の魚の代表がイラブチャーだろう。
ブダイの仲間である。
刺身でも加熱しても素っ気ない。
でもその魚をなんとか昇華させたいと、渡真利シェフは考えた。
皮付きで皮をバリッと焼くと、皮はうまいが、身にダメージが伝わって、美味しくなくなる。
そのため、皮だけ取り外し、揚げるように焼き付け、身は、バターの中でゆっくり火を入れ、強めの塩をして、元にに戻した。
するとどうだろう。
あの素っ気なかったイラブチャーが、しっとりと繊細になり、穏やかな甘みを滲ませるではないか。
つまり粗野が、エレガントに変身したのである。
これぞ料理である。
宮古島「エタデスブリ」にて。