「2年前に息子が戻ってきて平社員になりました」。
と、老主人は嬉しそうに笑われた。
また、素晴らしき寿司屋に出会った。
松山「くるますし」である。
70手前の老主人は、ほうぼうにガタがきているらしく、五月に手術を受けるのだという。
「寝よったら腕痛いんですが、店に来てわさびすると、痛くなくなる。スネもカウンターの中になると痛くない」
根っからの職人である。
だが、銀座の「よしたけ」や「青木」で修行した、若主人が帰ってきてからは、すべての仕事を任せている。
札幌「一幸」や四谷「後楽寿司すし秀」などと同じに、若き才能が爆ぜている。
酢がきっちりと効いた酢飯は、なんとも力強く優しく、旨味の濃く、品がある松山の魚とすっとなじんでいる。
そしてネタは、随所に細かい仕事が施され、本来の持ち味に粋と色気を漂わせて、惚れさせるのであった。
くるますしのすべての仕事は、別コラムを参照してください。