札幌「葡萄酒倉庫」
「羽幌産天然ヒラメのフリット 真昆布だしのトマトスープ」。
西では冬が旬とされるヒラメだが、北海道では、夏にもぐっと旨味が増す。
ソースをつけずに一口食べ、「何たることだ」と、つぶやいた。
カリッと衣に歯を当てると、優しい甘さが流れ出し、噛み締めるに従って昆布のようなうまみがにじみ出る。
真昆布だしとトマト、自家製京風味噌を合わせたソースが味を持ち上げるが、その凛々しき味が圧倒的ゆえ、スープもソースもいらない。
その他きめ細かい肉質ながら、羊の野生が香る「石田めん羊牧場のサウスダウン種ホゲット、もも肉と鞍下肉(3週間熟成)」。
北海道各地の肉を使った、肉質の品格が味に光る、自家製鹿のサラミや豚の生ハム。
カリスマとなってしまった、伊藤ファームのチーズ。
不耕起栽培のトマトやオーガニックの野菜。
地元の食材をのみを使った料理から立ち上るのは、北海道の産物と生産者を、一直線に愛する、シェフの情だ。
食べていて、心の内が清々しくなる料理とは、こうした皿のことを言う。
ただしまだ訪れる客は少ないという。
どうした北海道。どうした観光客。
ミシュランばかりを意識すると、見落とすことが多くなる。
それならいい。
でも誇るべき文化と、人々の情熱を失ったらどうするんだ。