昼のすき焼きは禁断である。
昼からこんなゼータクしていいのか、いつかバチがあたるのではないかという、罪悪感があるので、余計にうまい。
東京では珍しい関西風すき焼きの「岡半」。
昭和28年の創業時、「岡副くん(初代)、金田中をやりながら新しい店を出して、慢心してはいけない。いつも志し半ばであるという事を忘れずに、岡副くんの志半ばで、岡半と名付けなさい」。そう吉川英治から名付けられたという。
この砂糖の精妙な一振りが、肉を生かし、食欲を煽る。
砂糖と醤油の微かな焦げ香が、松坂肉の溶けるような甘みと結びつき、下を堕落させる。
ああこのまま地獄に堕ちてもいいとまで思うような、幸せがある。
「岡半」は、肉だけでなく、ザクも素晴らしい。
特に白滝、茹でから煎りした極細の白滝を、牛脂を包み込み、からめ、何度も返しては鍋肌についた牛肉のうま味を吸わせ、卵に落とす。
安平麩も同様。この二つはよくよくうま味をしみ込ませるために最後に出される。
コリコリと弾む白滝、ふわりと歯が包み込まれる麩。
上質な牛の甘みと砂糖や醤油や昆布だしのうま味を吸って、ああ、もうごめんなさいと顔が崩れるのであった