ここにも愛すべき変態がいる。
武雄温泉の「souRce」で、奇怪な有明海の魚たちを巧みな料理に仕立て上げていた梶原シェフは独立して、同じ地で「kaji」という店を立ち上げられた。
竹崎蟹、アコウ、自然薯、白瓜、茄子、ミカン、シラス、ヒノヒカリ、若楠豚、トマト、じゃがいいも、栗。
近隣で生まれた命を、山と海のつながりを意識しながら料理する。
シェフは、「釣りをするのが楽しくて」と、子供のような笑顔で釣りの楽しみを語った。
週2回ほど、店が終わってから釣りに出かけ、一晩中釣ってから明け方に店に戻って、さあこの魚たちをどう料理しようかと考えるのが、楽しいという。
シェフが釣ってきたというアコウは、身を生き生きとさせながら、アクアパッツァにされ、甘鯛は自然薯の甘みと出遇わされる。
このリゾットは、未成熟のミカンが使われていた。
「やっと出回り始めました」と、これまた嬉しそうに語ったグリーンミカンは、実家で作っているという米のヒノヒカリを3年間寝かせて、リゾットにしたという。
これから実らんとするミカンは、拙い甘みと酸味で米の旨味に優しく寄り添う。
そこへ、シナモンバジルのほのかに甘い香りが漂い、ビンゴットの練れた甘みがアクセントする。
見事である。
地元の食材を愛しながら、無理なく、エゴなく、温かみのある料理として成就させる。
どこにもなく、ここだけにある料理。
「kaji」の素晴らしき料理は、タベアルキスト倶楽部にて。
愛すべき変態がいる。
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