恵比寿「ルコック」勝手に救済

食べ歩き ,

週木曜、恵比寿「ルコック」勝手に救済。昼に客は僕一人、のんびりといただいたが、救済必要。
アミューズはスペシャリテのスモークサーモン。多くの店で食べたが、これだけ鮭へのいたわりを感じさせるものには出会ったことがない。
しっとりとして、舌の上で鮭の脂が溶けていく。
続いて、「鶏のレバーと葡萄のムース ポルト酒風味」。
葡萄の甘みとポルト酒の香りと甘みが、レバーをエッチに持ち上げる。
三者の均整が見事で精緻。一ミリの狂いもなく自然に佇んでいる味わいが美しい。
魚は、「マナガツオのムニエル」
マナガツオ特有の柔らかな甘みに、過熱によるたくましい香ばしさが加わって、思わず笑い出したくなる。
ガルニの新玉葱との相性もいい。
肉は、「仔牛頬肉の煮込みとサフランリゾット」。
仔牛肉がほろりと口中で崩れると、ならではのつたないゼラチン質がほどけていく。
親牛と違って線が細く、柔らかな甘みがあって、野菜の優しき甘みと調和する。
「ルコック」比留間シェフの料理は派手ではない。独創的でもない。
マスコミ受けする尖鋭や華やかさにも乏しい。
しかし、これ以上入り込む余地もなく、引く余地もない、丹精に計算された料理だ。
静かに食材と向き合った誠実な料理が、どれだけ健やかな心を育んでくれるかがわかる料理でもある。