雲の中で蕎麦を食べた。
店は霧に包まれ、山間を流れゆく雲を見ながらそばをたぐる。
冷涼な空気の中で、そばは生き生きとして、草のような香りを放ち、微かな甘みを滲ませる。
ここは熊野古道にある山の蕎麦屋である。
白浜からバスで1時間揺られ、迎えにきてくれた店主の車で山に登っていく。
全国に多くの蕎麦屋があるが、ここは最も蕎麦をたぐるのにふさわしい環境ではないだろうか。
なめこおろし、糠漬け、野萱草、わらびとわかめ、筍煮、カラスミ大根、鮎のうるか、いぶりがっこ、2年ものの豆腐の味噌漬け酒を飲む。
そばかきでさらに酒をやり、セイロが運ばれる。
ホワッと口に滑り込み、モチッと歯の間で弾み、ホロロと口の中を踊り回る。
蕎麦を冷や汁に漬けると、甘味がやさしくなった。
山の空気を吸い、蕎麦をたぐり、マリアージュさせてみる。
すると香りが、より研がれて、澄んでいく。
口を、喉を、鼻腔を、身体を浄化する。
店主は山伏を目指し、そば打ちになったという。
そんなそばが、都会にやってくる。
虎ノ門横丁のポップアップで、あのそばに出会える。
ビルが立ち並ぶ真ん中で、蕎麦をたぐり、目をつぶれば、山の匂いがするだろう。
ミシュランの蕎麦屋で唯一のグリーンスター「山伏そば拝庵」の詳細は、下記でご覧あれ
是非ビデオも見てください