今まで出会ったことのない

日記 , やぁ! ,

今まで出会ったことのない、感覚だった。
海 「つながり」と題された皿には、半生に火が通されたテナガエビと、生ハム、蝦蛄海老、ラビオリに包まれたスッポン、金針菜、トリュフ、半熟の鶉玉子の黄身などが配されている。
手長海老を一口そのままで食べてから、それぞれを食べていく。
一緒にしたり、単体で食べたり、からめたりして食べていく。
するとどうだろう。
普通は、皿の中の構成要素が多いと、なにを食べさせたいのか、主役はなになのか、盛り込みすぎて散漫になってしまうものである。
しかしこの料理は違った。
大いなる自然の静かな躍動が聞こえ始め、すべての食材が共に生き、手を繋げている感覚が、体の奥底からせり上がってくる。
そして食べている自分自身も、目の前にある食べ物の生命と繋がっていることを知る。
大地と海と空の中で生かされ、共生していることを知る。
その感謝が、ひっそりと心にしみ込むのである。
どういう仕掛けかはわからない。
恐らく皿の上にある食べ物は、選び抜かれた必然であり、調味も食感もすべてが計算された、初々しい出会いなのだろう。
こうして「HAJIME」の料理は、生物とは人間とはなにかを問いかける。
5時間以上かけて、様々な熱源で加熱された、まだ生きているかのような鴨肉の不思議。
人工的なフォアグラの、澄んだ良心だけを抽出した、0.1℃単位の加熱。
生と加熱の中間を目指し、その艶っぽさと純粋が溢れ出る、生暖かい琵琶鱒。
生命の目覚めを切り取った味は、地球上でのさばる人間の意義を問い、我々を沈思させる。