中軽井沢の一角、木々に囲まれた白い木造二階建て洋館がある。
アーリーアメリカンのジョージア様式で建てられたその館は、「シェーカー」というコーヒーショップである。
登山、釣り、スノボー、キャンプが大好きな店主黒澤さんは、一人でこの地に移り住み、一人でこの家を建てた。
室内はすべてシェーカー家具で統一されている。
「シェーカー」とは、プロテスタントの流れを汲む英国のクエーカー教に端を発した一派で、19世紀に渡米した工場労働者たちが信奉した教団である。
規律と労働を重んじ、簡素に調和と機能美を求めた。
その自給自足の生活の中より生まれた家具を、シェーカースタイルという。
さりげないシンプルな美しさは、使う人の心を安寧へ運ぶ。
例えば、「シェーカー・ストレートチェア」と呼ばれる椅子は、細身ながら強度があり、手間暇をかけた円柱など、効率と華美を求める現代が失った、息を呑む美しさがある。
素朴の極みながら、使えば使うほどに体に馴染み、生活に潤いを与えてくれる。
できれば、毎日ここでコーヒーを飲みたい。
来るたびに、叶わぬ思いを抱く。
軽井沢という半都会、半田舎の中で、隔絶された空間は、僕らに何を教えてくれるのだろう。
ここには、都会の速度も汗も届かない。
ゆっくりと細胞が解放され、本来の自分が戻って来る。