下関「布久亭」でクジラを食べている。
ん? 下関なら、フクだろうって?
ハハ。もちろん食べるさ。
でもこの地は、近代捕鯨の発祥地で、大洋漁業、大洋ホエールズも、下関で創業したのである。
刺身はなんと生だという。
しかも、ミンク鯨である。
尾の身は、馬刺しのような、軽やかな鉄分が口の中に広がり、噛んで温まってくると、ほわりとした一筋縄ではいかない、顔を出してくる。
それは動物的でもあり、生命として譲れない香りなのかもしれない。
ベーコン。
脂の部分を噛むと、シコッよりもさらに手強いのだが、すっと歯が入っていく。
そして香りをそっとしのばせる。
肉は歯を押し返しながら、塩気の中に甘みを漂わせる。
ミンクならではの、厚切りが嬉しい。
さえずり。
肉の部分は上等なハムである。
品のいい甘い香りがあって、美しく、脂は、ザクッと歯が入り、2〜3回目でふんわりとなって、10回目から溶けていく。
そしてもう、自分の舌かクジラの舌か区別がなくなる。
こんな色気のあるさえずりは、初めて食べた。
下関「布久亭」でクジラを食べている
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