ムニエルとは何か。
「北島亭」の「かすべのムニエル　ジャガイモ添え」には、その答えがある。
バターを焦さずに、じっくりと魚に火を通し、皮は香ばしく身はしっとりと火を通す。
バターは透明なまま、その純粋なコクだけを魚に与え、淡泊でいながらコラーゲンのうま味をたっぷりと持った、かすべという魚のうま味を膨らます。
バターの甘みとともに、かすべが舌にほろりと崩れ、柔らかな身が広がっていく。
その瞬間、バターと手をつないだ海の豊かさが顔を出し、美味の本能をぐさりと刺す。
そしてまた笑う。しみじみと「うまいなあ」と呟かせる。
「ムニエルは、時間もかかり神経も使うから、やりたくないんだよね」と、北島シェフ言っていたという。
やりたいのだ。だからこそ北島シェフはムニエルという仕事が大好きで、必ずメニューに載せるのだろう。