ホヤは旅を嫌う

食べ歩き , 日記 ,

ホヤは旅を嫌う。
だから現地で剥いて身を取り出したホヤを、ホヤ水につけて東京に運ぶ。
ホヤを切って、強めの昆布出汁で澄まし汁仕立てにする。
塩はしない。
塩もみをした胡瓜の小口を入れるだけ。
汁はホヤのエキスで白濁し、その中でオレンジ色のホヤと緑の胡瓜が仲睦まじい。
食べるとどうだろう。
カラスミやこのこに似た、練れた複雑なうま味があって酒を呼び、顔はにたりと崩れ、燗酒を求めて手が動く。
銀座「智映」の一皿である。