今年五月にできたイタリア料理店。
スペシャリテは、輻射熱が当たらないように作ったという特注の炉にて、肉焼き名人として知られるシェフが焼くステーキ、「ビフテッカ・アラ・トッサーナ」。
料理名からもわかるように、繊維が細く、密な土佐赤牛を使う。
昼には、その赤牛を使ったハンバーグが登場する(千四百円、サラダ、飲み物つき)。
粗く刻み網脂で包んで、薪火の熾火で焼かれたものである。
肉の塊りにナイフを入れると、肉片がこぼれ落ちる。
焼けた香ばしさに続いて、猛々しい肉の香りが広がり、奥歯でぐっと噛めば、肉のエキスが溢れ出る。
脂の甘みに頼ることない、甘えのない肉汁が、噛むごとに押し寄せる。
付け合わせの胡瓜の薪火焼きの、驚くほどのみずみずしさ、甘く香ばしい、ジャガイモ炭火焼、酸と塩分がピタリと決まった、前菜のサラダも傑作。
これはもはやハンバーグではない。
ステーキである。