ジンギスカンブームというのがあったのを、覚えていらっしゃるだろうか。
それは、先日記述したスペインバルブームと同年、2004年終盤から2005年にかけて起こった。「安くてうまい」という従来のイメージに、気さくなスタッフ、打ちっぱなしの内装、赤ワインなどを飲めるようにして、「モダン」な印象をつけ加えたことにより客層が広がり、中目黒辺りから火が付き始め、マスコミ報道も加わったことで、本格化した。
まあバル同様、「初期投資が少ない」、「専門的知識が少なくて済む」、「人件費が抑えられる」といった利点もあったのだろう、2005年のピーク時には一ヶ月に20店舗というペースで増え続けていったという。
一気に10倍以上となった店舗は、2006年になると次第に入りが悪くなり、閉店が続く。
今では、すっかり見なくなってしまったが、それでもブーム前より店舗数は、大幅に増えたという。
ブームで羊肉の魅力にはまった人が増えたのだろう。従来からのジンギスカン屋も、新たな常連客がつくようになった。
例えば都内での老舗格、中野の「神居古潭」もそうだ。
「神居古潭」は、ブームのはるか以前、1986年開店したジンギスカン店である。
以前は親父たちばかりが煙にまみれていたが、最近は女性同士や30代前半のお客さんも多い。
熱源は炭。ジンギスカン特有の凸状の鉄鍋に、羊の脂をひき、鍋の周囲、つまり麓部分にキャベツ、もやし、玉葱、人参などの野菜を置いたら、山頂部で羊肉の薄切りを、ジィジィと焼く。
羊は焼きすぎない、ミディアムレアが食べごろで、2~30秒で裏返し、すぐに醤油やリンゴ、酒などが入ったつけダレで食べる。
羊は、並ホゲット、極上ホゲット、北海道ラム、北海道マトン、オーストリアラムと五種類あるが、お奨めは並のホゲット800円だ
ホゲットとは、12~24ヵ月飼育された羊。ラム(12ヵ月未満)とマトン(24ヵ月)の中間で、ラム肉のきめ細やかさもあれば、マトンの猛々しい香りも感じて、羊肉好きにはたまらない肉である。
つまり柔らかき肉にふわりと歯が包まれ、肉汁が溢れ出す刹那、野生の香りが鼻に抜けるというワケだ。
その風味が、「肉を食らっているゾォ」と、我々の体の中に眠っていた野生を叩き起こす。お替りを次々と頼み、ビールやワインも進み、もう箸は止まりません。
その日常にはない快感は、おじさんを連れて行っても、女性を連れて行っても喜ばれる。締めのうに丼やいくら丼もお奨め。しかもジンギスカンも丼も廉価ですから。
中野「神居古潭」
http://tabelog.com/tokyo/A1319/A131902/13010443/
ブームの立役者は健在。肉の質がいい。客層若い。
中目黒「まえだや」
http://tabelog.com/tokyo/A1317/A131701/13003202/
ジンギスカンではなく、羊焼肉屋。羊を知り尽くしたご主人が、様々な部位を食べさせてくれる。
門前仲町「ひつじの新町や」