ほんとうに

食べ歩き ,


「ほんとうに、食べものに感謝しています」。
そう彼女は、何度も繰り返した。
死にたいほどの辛さがあっても、おいしい食べ物があったからこそ、励まされ、懸命に生きて来られた。
おいしいものを食べると笑顔になる。
泣きながらおいしいものを食べる人はいない。
だから今でも彼女は、一切手を抜かない。
二日間、鍋の前につきっきりでスープを作る。
砂糖は使わず、うま味調味料も使わない。
手の感触を大切にし、キムチを作る時も手袋はしない。
それはいい悪いではなく、料理への敬意。
自分を生かしてくれ、今の幸せを育んでくれた、料理への感謝なのである。
月島「韓灯」のお母さん。72歳。