<駅弁勝負> 第18番 マイベスト。

駅弁 ,

食べて、減っていくことが寂しくなる弁当である。

駅弁は、ちょっとゼータクになりすぎていませんか?
過ぎ行く光景が一番のご馳走で、その旅情を盛り上げてくれるのが駅弁ですよね。
と、玄米弁当は問いかける。

化学調味料や動物性脂肪やタンパク質、食品添加物を一切使用していないが、それだけが偉い訳でない。
余分な色気なぞなく、当たり前のことを当たり前の精神で仕立てている高潔さに、魅かれるのである。

甘辛いひじき、ごま油の香り高いきんぴら、出汁が染出るがんもどき、しっかりと煮含められた椎茸、歯応えのたくましい沢庵。
それらが、噛み締めるほどにうま味が広がる小豆入り玄米を盛り立てる。
おかずと玄米の味のバランス、量の兼ね合い、すべてがこれ以上でも以下でもない美しさがあって、心を打つ。
パセリだけが画竜点睛を欠くが、許しちゃおう。
玄米もおかずもよくよく噛んで噛み締めて、その養分に感謝する。
神経を研ぎすまして、朴訥なうま味を味わう喜びを噛み締めながら、最後の一粒一切れも残さずに、味わい尽くす。
ごちそうさま。

1、玄米がなんといってもおいしい。噛めば噛むほど味がでる。
2、沢庵。厚い。噛みごたえある。自然に黄色くなった本来の沢庵。
大根の味わいが生きている。
3、がんもの煮物。うす味の汁がたっぷり沁みている。
4、シイタケの煮もの。甘すぎない。白砂糖の嫌味もない。
5、きんぴら、ひじき、弁当だというのに、共に味付け濃すぎない。
6、以上。
駅弁にこれ以上何がいるのだろう。
玄米を噛みしめ、噛みしめ、おかずを一口食べてから
玄米を三口。
幸せが体の底からじりじりとせり上がる。
充足感に箸をおく。

荻野屋の「玄米弁当」500円。
おぎのやという駅弁会社の良心がここにある。