なんでベーコンなのか。

食べ歩き ,

なんでベーコンなのか。
なんでベーコンを揚げようと思ったのか。
一度聞いてみたい。
だってそうでしょう。
ベーコンといえば、脂身が多いばら肉である。
ソテーしたことがある人ならわかるが、相当量の脂が出るので、脂に油という、暴挙である。
鹿児島には「バラカツ」といって、豚ばら肉のとんかつがあるが、そこからのヒントか。
あるいは単にベーコン好きなのか。
とにかく渋谷「凛花」のメニューを開くと、「鯖のお造り」、「マグロカマ焼き」などに交って、「THE厚切りベーコンカツ」(1260円)の文字が、燦然と光っていた。
それを見た瞬間に、油好き、フライ好きなら、もう居ても立ってもいられなくなる。
なにしろ、「THE」と定冠詞付である。
自信のほどがうかがえるではないか。
店内には、いるいる。
ベーコンカツに齧りついているお客さんの頻度が高い。
頼めば、厨房で揚げている音が、聞こえ始め、さほど待つことなく、ベーコンカツは登場した。
厚さ二センチ強。堂々たるベーコンが、香ばしい衣に包まれ、断面に艶艶やかな脂を光らせて、早く食べろと誘ってくる。
すかさず一切れ、口に運んだ。
サクッ。
中粗の衣が音を立て、ベーコンに歯が食い込む。
いや喰い込まない。
肉なら食い込むが、脂身が多いため、ふんわりと歯が包み込まれる。
抵抗感の弱いカツである。
ただしそこから脂の甘い香りが広がっていく。
芳ばしい燻製香が、ほんのりと広がっていく。
その時我々は、ああ肉を食っていると、目覚めるのですね。
ご覧の通り、薄紅色の肉部分もあるが、食べている感覚では、脂、脂、ひたすら脂である。
しかしぶよぶよではない。
締まって、口どけのいい脂なので、その柔らかさと衣の食感の対比がメリハリとなって、食べ進む。
最初はそのままで、次にソースそしてマヨネーズも試してみた。
ソースはいいが、マヨネーズはちょいとくどすぎる。
それより黒胡椒をたっぷりかけるのがいい。
胡椒の刺激が脂の甘みを引き締めて、さらに旨味が増す、最適な組み合わせである。
その余韻を口に残したまま、すかさず冷たいビールか焼酎のロックを、くぃーっとやる。
はは。昼からたまりませんぜ、兄貴。