そっと噛むと、いたいけな甘みが滲み出た。
そして微かな切ない苦みもあって、その中には、これから天に向かって伸びんとする、命の躍動がある。
命の儚さが、体の中に沈殿してゆく。
筍とアワビのカルボナーラ。
小倉は合間の朝掘りを、寸前に皮をむき、お出汁に30秒漬ける。
エゾアワビは昆布出汁で炊く。
卵黄とパルミジャーノ、パンチェッタで作ったソースに、白トリュフを刻んで入れる。
ソースの旨みは出しゃばることなく、筍やアワビの繊細をそっと支える。
そのバランスが美しい。
春の只中で、生かされゆくことを感謝する。名古屋「トラジョア」の一皿。
2017