しみじみ「うまいなあ」と呟く。

食べ歩き ,

4P以上のでかいうなぎもいいが、こうした小ぶりの5Pうなぎもいい。
脂が少ない分、身の繊細な甘みや香りがつたわってくる。
養殖ながらも、川魚特有の身の柔らかさと淡い旨味を噛み締め、しみじみ「うまいなあ」と呟く。
「はし本」の橋本さんは、一匹一匹の個体差を感じながら、蒸す時間をかえる。
昔のやり方を守りながら、現代の技術でより良くなるところは代替えする。
タレは甘めだが、ご飯にかかる量が絶妙なので、甘さを感じさせずに心をグイグイと引っ張り込む。
焦げやすい甘みのタレで、焦げひとつなく、このように焼くのは至難だろう。
ご飯は硬めで、肝吸いの旨味は淡い。
すべてが真っ当な江戸前の仕事が生きている。
そしてうなぎも、信頼の置ける養鰻業者と、直接取引をしている。
いいうなぎ、美味しいうなぎを生む、養鰻業者であるが、それだけでない。
健やかなうなぎか、環境に負荷をかけていないか、うなぎ食文化を明日へ繋いでいくビジョンがあるか。
このうなぎは、岡山県北東部に位置する西粟倉村で育てられている。
人口約 1,500 人、面積の約 95% を森林が占める村で育てられている「森のうなぎ」である。
人とうなぎの良い関係を再構築するためには、どう育てて提供するのがいいか。
林業と水産業をつなげて “循環”させていくことを目指しながら、模索を続けている業者だという。
「自然資本(Natural capital)」の価値を高めていくために、試行錯誤している会社であり、森から価値を生み出す流れをつくってきた会社だという。
そのHPにはうなぎの明日のことはこう書かれていた。
「私たちは、単にうなぎの養殖をするのではありません。森に囲まれた環境で、森のめぐみを活用しながら林業と水産業をつなげて循環させていくことを目指しています」。