きんとんが一番好き。
ぐーるめを気取るなら、黒豆辺りに肩入れしなくちゃいけないのだろうけど、ゆずれない。
しかも栗よりまわりの餡のところ。
脇役ながら、ねばっこく主張してきていじらしい。
栗が消えたあと、舌でねっとりのったり、もてあそぶ。
そこへすかさず、ぬる燗流し込む。
酒ときんとん。
相反する両者を出会わせていると、いけないことをしている気になってくる。
そんな、小さな戦慄がたまらない。
きんとんは甘すぎてはいけないが、洗練されすぎて甘味を抑えたのもいけない。
甘味が貴重であった時代の、必要な幸福を感じさせて欲しいなぁ。
すっと切れる甘味のなかに、少しの野暮と日向の温かみが宿っていて欲しいなぁ。
似合わない殻を背負った大人を、子どもにして欲しいなぁ。