かき揚げそばのお作法

食べ歩き ,

「天ぷらそばを、安易に頼まない」。
僕は立ち食いそば屋に入るとき、心に命じる。
「天ぷらそば(あるいは天玉そば)ちょうだい」。
立ち食いそばに入るなり、いきなり頼む人の、いかに多いことか。
おそらく無意識のうちに、自分がなにを食べたいのか自答することなく、
安直に頼んでしまうことが多いのだろう。
だから僕は必ず、
「本当にお前は天ぷらそばを頼みたいんだな? 今日は天ぷらそばでいいんだな?」と、自問してから頼むことにしている。
さて、立ち食いそばの天ぷらそばといえば、かき揚げである。

ただしこのかき揚げそばには、欠点がある。
つゆが染みたかき揚げを持ち上げると、重く、口にしなだれかかり、
どこで噛み千切っていいのか、途方にくれるのだ。
そばとの一体感がなく最後のぐにゅぐにゅになった情けなさと、そばとの兼ね合いがつけられないのだ。
そこで僕は
1、かき揚げそばが出されたら、葱をかき揚げの上にいったん避難させる

(葱の瑞々しさを残したいがゆえ。葱のシャキシャキした食感とかき揚げ、そばの食感との対比を楽しみたい)
2、かき揚げを箸でちぎる

3、千切ったかき揚げとそばを一緒に手繰り、その合体感を楽しむ。

4、途中薬味(葱)を追加。
(ただし、こうして追加できる店は滅多にない。写真は渋谷駅のしぶそば。「葱多めで」と頼む手もあり)
5、さらに千切る。
(これにより、ゴーカなたぬきそばの様相をなす。楽しい)

以上。
天玉そばの食べ方は、
またいつか。