今から5年前の話である。
両国で寿司を食べ、帰り道で洋食屋のショーウィンドウに目が止まった。
「チキンライス」と書かれてはいるが、そのサンプルはどう見てもチキンライスではない。
どうなっているのか気になって仕方ない。
ところが気がついたら、どうしたことか、店に入って座り「チキンライスください」と注文している自分がいたのである。
「はい。チキンライスおまたせいたしました」。
これがチキンライスか。
チキンライスでもドリアでもない、チキンライスである。
ホワイトソースとパン粉をかけて焼き上げた、チキンライスである。
Riz au poulet à la sauce béchamel gratinée と申しましょうか、そんな料理なのである。
困ったことに、うまみの重層攻撃にスプーンが止まらない。
さっき食べたばかりだと言うのに、スプーンが止まらない。
調味に工夫がある訳でもないのに、スプーンが止まらない。
鶏肉も少なく870円は高いと思うが、スプーンが止まらない。
アルマイトの皿が愛執を呼びこんで、スプーンが止まらない。
ということで全部いただきました。
一件落着。
「気をつけよう、食後に見るな、ショーウィンドー」。