「ハムカツ」の4文字に弱い

日記 ,

「ハムカツ」の4文字に弱い。
今日も、トンカツを食べにきたのに、ハムカツも頼んでしまった。
見事にぶ厚い、ハムカツである。
世間では、ハムカツは薄くあるべきか厚くあるべきかという論争があり、いまだ決着はついていない。
しかし大半は、薄系ハムカツに軍配を上げ、厚系ハムカツ族は肩身を狭くして生きている。
僕も以前は、断然薄系ハムカツ族であった。
ハムカツとは半ば衣を食べる料理であり、ハムもいるなあというくらいの存在感の弱さ、そのわびしさが、逆にご馳走感を増すのである。という持論を展開していた。
しかし今は、どちらも愛すことにしたのである。
年を重ねたせいもあろう。
物事への執着が弱まったせいもあろう。
だが、厚いか薄いかなどと、人間様の好みをおしつけちゃあ、ハムカツに失礼だと思うようになってきたのである。
ただ食べ方は異なる。
薄いハムカツは、断然ウースーターソースである。
ソースをたっぷりかけ、そういえばハムもいるなあという思いを強くさせる。
一方厚いハムカツは、トンカツソースである。
トンカツソースをかけて、練り辛子もたっぷりつけて、おかず感を盛り上げてやる。
ゆえに前者は、ご飯の友というよりハイボールやビールのお友達で、後者はご飯の伴侶として選びたい。
さて、ここ椎名町「おさむ」のハムカツ単品は、キャベツも添えられ、この厚さで揚げたてで150円。あなたは肉屋ですかとたずねたくなる、嬉しい安さである。
ハムカツに敬意を払い、一切れずつにソースをかけ、練り芥子をたっぷり浸けて、ちくしょうめと涙を流しながら、ご飯で受け止めた。
ハムカツは一人で食べるのが似合う。
大勢で、騒ぎながら食べるものではない。
わびしさが薄まるからね。
BGMは、店主の好みか、超絶技巧ギタリスト、アンディ・ティモンズ。
ギターの雄叫びを聞きながら食べるハムカツも、実に味わい深い。
帰り際に勘定場で、本日限定カツサンド5食を発見した。
買うべきかやめるべきか、かなり悩んだ。
トンカツも、ハムカツも、串カツも食べた後なのにね。
フライ料理の誘惑は、人間の業の深さと似ている。