とどまることを知らないラーメンブームは、次々と個性的なラーメンを生み出している。しかし一方で、オーソドックスなラーメンのおいしさを追求する店も増え始めているのも事実だ。そうしたラーメン屋は、ご主人一人やご夫婦で営んでいるケースが多く、市ヶ谷の「くるり」、以前ご紹介した初台の「一福」などは好例であろう。
去年暮れ、ラーメン激戦区の高円寺にできたこの店もそうだ。清潔感あふれる店にはもの静かなご主人が一人。「ラーメンを下さい」と頼めば、寸胴鍋からスープを小鍋にとり、ラーメンダレを注いで火にかける。次に茹で釜の近くに置かれた丼を取り、別のタレを加え、チャーシューを切り分ける。スープが温まるのを見計らって、麺を茹で始め、茹で上がる寸前にスープを丼に注ぎ、入念に湯切りした麺を入れて整え、海苔、ねぎ、シナチク、チャーシューをのせて完成だ。丹精で丁寧な仕事振りからもうかがえるように、煮干や鰹節系のすっぱい香りが立ち昇るスープはうまみが過多ではなく、中細のストレート麺がその滋味を絡めながらつるつると口元に滑り込む。一口目はあっさりと感じるスープだが、肉系の出しのうまみがしっかりと底支えしており、次第にうまみが増して、最後はコラーゲンで唇がべとつくほどだ。スープ、麺、具と、すべてに神経が行き届きながら、静かに主張する、万人に愛されるであろう、誠実な東京ラーメンである。
太鼓判!!
「らーめん」650円
「ゑびす屋」3339-6262
11:30~15 18~22 水曜
高円寺駅北口から徒歩十分
閉店