青山に先週金曜日、また新しいすし屋が誕生した。
「ます田」。
ご主人増田励さんは34歳。
寿司屋がやりたくて、やりたくて、小倉の「もり田」に志願して少し働いたが、「鮨をやりたいなら東京で勝負しな」と親父さんに言われ、「すきやばし次郎」で9年間修業した。
青山の骨董通り沿いのビルの地下にある。
握りは、次郎と同じスタイルである。
黑いすし板に握りが乗ると、ふわっと微かに沈む。
次郎より若干握りが小さいが、美しい。
魚も今の時期にしては、最上のものを揃えている。
恐らく若手の中では、群を抜いているだろう。
カウンターは僅か5席、次郎出身ということで、瞬く間に人気が出るだろうが、なにかと次郎と比較されることも多く、プレッシャーもあるだろう。
そう話すと彼は、「いや、比較していただけるだけで光栄です」と、唇を引き締めた。
さらには、他のお客さんが帰った後だったので、
「数寄屋橋との違いを、教えていただけませんでしょうか」と、尋ねてきた。
端正な顔立ちの中に、負けん気が渦巻いている。
自分のすしを毎日進歩させていきたい、気力が滲んでいる。
今は次郎さんの御客さんが多く、それもまた重圧だが、
「最初に、様々なプレッシャーをいただけるのは幸せです」とほほ笑んだ。
見逃せない、楽しみなすし屋が、また一つ出来た。