銀座「エスキス」

勢い。

食べ歩き ,

日本人なら松茸は、香りを立たせるためにもっと加熱をするかもしれない。

しかし「エスキス」のリオネルシェフは、わずかな火入れに止めおいた。

噛むと、澄んだ体液が滲み出る。

朝露のように微かに甘いエキスは、舌と上顎と喉を清め、体に染み渡っていく。

松茸の香りに陶酔していただけの人間に、命の希少を問いかける。

目を閉じれば、秋深い森の中に運ばれ、清廉な風を頬に感じながら、静かな命の鳴動を感じ、自らが生かされていることへの感謝がわき上がる。

料理は叫ぶ。

これこそが「勢い」であると。