生きている。
熱を通されても、その生物は生きていた。
コリッと音が響くと 葉緑素の香りが鼻に抜ける。
ほの甘いうまみが舌に流れる。
自らの命を高らかに 俺は若布だと脈動する。
生に満ち満ち、 潮の流れに身を任せるしなやかさと強靭さで圧倒する。
丹念に育て、 真ん中部分だけを切り取って、両端は二メートルも海に捨てるのだという。
村さんのわかめ。
命を発散する食べ物が、いかに人の心を打つのか
誰もが痛感する。
しかし もうこのわかめは食べられない。
漁師に専念するため、今年でわかめ栽培はやめると決意されたからだ。
日本から本物が、また一つ消えた。