ベスト3

日記 ,

針が落ちた。一曲目が始まった。瞬間に体中の血が沸き、座っていられず、部屋中を跳ね回った。

「ホットラッツ」を初めて聞いた時の衝撃は、今でも鮮明に覚えている。

フランク・ザッパは、一番好きなアーティストである。本作は、ソロ第二弾で、前衛かつ実験的音楽要素が多い彼は、奇才とか変態とか呼ばれるが、実際は、そんな取っ付きにくくはない。

変拍子が多いが、ジャズやポップス、R&B、ビーバップなどの要素が巧みに織り込まれていて、要所要所で爆発する、その意外性が、血を焚きつけて、高揚させるのである。

概念をぶち壊し、未知の創造へと向う興奮があって、高校生だった僕は、ズブスブとはまっていった。後に代表曲となるこの曲は、60歳を超えた今でも聴き返して、疑念を壊す必要性を、心に刻み込む。

サザンオールスターズ。この国民的アーティストには、入社と同時に出会った。レコード会社に入り、配属された部署に、デビュー前の彼らがいたのである。以後数十年間仕事をさせていただくことになる。

デビューアルバムに入っている「恋はお熱く」を聴いたときは、たまらなく切なくなった。モテないがロマンを追いかけていた自分と同化して、どうにもやるせない。

田園コロシアムのライブで、この曲をアコギ一本で歌う桑田佳祐の声を聴きながら、仕事を忘れて、一人涙した。

「私の孤独」。この曲を知ったのは、多くの人と同じように、寺尾聡主演のテレビドラマ主題歌である。ジョルジュ・ムスタキは、17歳で非労働移民としてギリシャよりパリに移り住み、やがてシャンソン歌手として成功した。

孤独を友にし、共に眠り、それを甘美な習慣にしてしまった彼は、孤独と一緒だからひとりぼっちではないと歌う。そこには並大抵ではない孤独を克服してきた男の真理がある。

精神と肉体の彷徨を経てきた人間でしか語れない哲学とユーモアが、脈々と生きている。それが今でも、心を打ち続けるのである。