生ビールが、おいしい時期がやってきた

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「ぷはあ~」。

生ビールが、おいしい時期になってきた。やはりこの時期は、どうあっても、なんとしても、一杯目はビールである。

ビールの清涼で、熱気と湿気を忘れ、仕事や都会の汗もぬぐいたい。

しかし一杯目であるからこそ、おいしいビールを飲まないと、その後の気分がずいぶんと変わってくる。

きめ細かくクリーミーな泡が、唇をいたわるように包み込み、グラスを傾ければ、冷ややかな液体が静かに流れ、舌を過ぎ、喉をグググと鳴らす。

鼻に抜けるホップの華やかな香りを感じながら、体に精気を吹き込んだビールに、感謝する。そんなビールであってほしい。そんなビールと最初に出会える店に、行きたい。

その後の料理も、会話も輝きをまし、充実した時間を過ごすことができる。これを、「序章効果」と呼ぶ。まあ、私が勝手に命名したのだが、一つの真理であるのは確かなのに、意外と無関心な人が多い。それではいけない。

もっとビールの序章効果を期待し、高め、飲食を、外食を豊かにしようじゃないかと、コーフンしながらやってきたのは、東京会館の「ロッシーニ」である。ここは都内に650店あるという「プレミアムモルツ 超達人店」認定であるという。

「樽生達人」の店なら知っていたが、「超達人店」とはなにか。樽生達人店の中で、以下の条件をクリアーした店だけが認定されるのだそうである。

まずは樽生三原則の徹底で、①毎日の洗浄・・水洗浄とスポンジ洗浄を毎日行い、週一回機械の分解洗浄を行う。

②適正なガス圧・・一時間おきにガス圧のチェックする。③静置冷却・・樽は30℃以下で使用。という条件をクリアし、さらに①きれいなグラスと自然乾燥。②おいしい樽生の注ぎ方・・カニ泡(泡表面の肉眼で見える大きな泡)なしの提供という、《こだわりにヶ条》を徹底せねばならない。

ふうっ。大変である。我々の最初の一杯のために、準備し、細心の注意でビールを注いでくれる人たちがいる。そう思うだけで、うれしくなってくるじゃありませんか。

「生ビールお願いします」。カウンターに座って注文すると、「かしこまりました」といって、チーフバーテンダーの     さんが注ぎ始めた。

目の凝らし方が違う。ビールをなみなみと注ぎ泡を立てると、一旦、ナイフで泡を取り、再び注ぐ。きめ細やかな泡が、生きもののように膨らんでいく。

すうっ。差し出されたビールを飲むと、いささかの抵抗もなく、滑らかに舌を過ぎ、喉へと落ちていく。

「うまく注げば、世の中の液体で、ビールほど沢山飲める液体はありません」。かつて八重洲のビアホールにて、ビール注ぎ名人と呼ばれた職人の言葉を思い出す。

そこで無理にお願いして、一回で注いだビールもお願いし、飲み比べてみることにした。するとどうだろう。

一回だとまず苦みを感じるが、二回だとほの甘みを感じるではないか。さらに一回注ぎは、泡が重く、二回は泡が軽やかである。一回注ぎでは、炭酸がやや粗く感じられるが、二回は炭酸が細かい。

つまり二回で注ぐと、よりスムーズであり、口当たりが良くて、飲み飽きることがない。唇に、舌に、喉に優しいのである。

そんな優しさとこの店の名物をあわせてみよう。まずは人気の「ボロナソーセージのソテー」である。

厚切りにしたソーセージをたっぷりのバターで炒めた素朴な料理だが、これがうまい。

ほんのり焦げて、カリッとなった柔らかいソーセージを齧れば、バターのコクと豚の甘み、スパイスの刺激が交差する。

これがまたビールに合う。ビールを飲んで食べると、バターや肉の香りが膨らみ、食べてから飲むと、肉の甘みが引き立つ。

しかもビールが油っこさを拭い去ってくれるから、実に好都合である。ビール、ソーセージ、ビール、ソーセージとやっていると、永遠にこの時間が続く気がしてくる。

さらには、マッシュルームとベーコンと炒めた「フライドポテトロッシーニ風」もいけますぞ。ベーコンの燻製香とマッシュルームの香り、芋の甘みが、ビールに深いコク与えるのである。

「ロッシーニ」でいい気分となり、次なるビールと料理の相性を求めて、表参道に向かった。中国料理の「希須林」である。こちらも、「超達人店」認定店であり、しかもスタッフ全員が、注げるのだという。

場所柄、女性客が多いが、皆さん最初からビールをよく飲まれ、この店のビールはおいしいと言われるそうである。

ふふふ。楽しくなってきたぞ。さあナニを食べようか。やはりまずは、ビールの相棒としては定番の餃子をいき、次には人気の「希須林レバニラ」といってみよう。

やはりいいですね。餃子にビール。カリッと香ばしい、熱々の餃子に歯を立て、餡のうま味が広がってきたところで、すかさずビールだ、こんちくしょう。

餃子の油感や熱さを、するっと優しくぬぐい去って、また再び餃子が恋しくなる。そして餃子、すかさずビール。ああ、この幸せな時間も、営々と続くのだな。

さあ今度はニラレバが運ばれてきた。この店のニラレバは、他店とは様子が違う。

オレンジ色の油に浸かったレバーがあり、その上炒めたニラがこんもりともられている。さあ食べろと、言わんばかりの迫力あるお姿である。

聞けば、レバーを炒め、ニンニク、激辛の朝天辣醤、オイスターソース、醤油、砂糖で作ったタレをからめ、ごま油で炒めたニラを盛ったのだという。皿の周囲にある油を見ると、一瞬油っぽく見えるが、強火で巧みに調理しているため、油っぽさは微塵も感じさせず、味の切れがいい。

レバーを食べるとヒリッと辛い。しかしそこにビールを飲めば、辛さがひいて、レバーの甘みが顔を出す。さらにニラは、ビールと合わせれば香りがたつ。

生ビール効果により、こんなマリアージュがあるとは、今まで気づかなかった。いやそれも「超達人店」に選ばれた人たちの、入念な日々の準備と技と心根があってこそ生まれるマリアージュなのだろう。

ううむ困ったなあ。これはしばらくはまりそうだ。