焼き餃子の命

食べ歩き ,

焼き餃子の命は、三つある。

カリッと焼けた香ばしい皮と、もちっと歯に食い込む皮の食感、よく練られた肉の餡である。

しなやかな薄皮や、野菜主体の、頼りなさも捨てがたい。しかし皮と肉餡に主張のある焼餃子に、僕は軍配を上げたい。

創業61年という「大陸」の小さな焼き餃子にも、その三つは宿っている。ニラと干しエビが入った「特製焼き餃子」もいいが、まずは基本の「焼き餃子」を頼みたい。

一人二人前は頼みたい。ビールも忘れずにね。

餃子が運ばれる前に我々がすべきことは、タレ作りである。

卓上には、醤油、辣油、酢が置かれているが、ここでおもむろに、「胡椒をください」と、お願いをする。

胡椒が来たら、小皿に酢を入れ、胡椒を振り入れる。憎たらしい人でも思い浮かべ、ただひたすら酢の表面が、胡椒で覆われるほど振り入れる。

「酢胡椒攻め」である。胡椒の刺激と香りに、酢の酸味をまとった餃子の、おいしいコト。

この酢胡椒攻めを知って、普通の餃子ダレに戻れなくなった人たちを、何人も知っている。

本当は黒胡椒がいいのだが、「大陸」のような白胡椒でも、充分威力を発揮する。

酢胡椒攻めで最後まで通すのもいい。だが変化

をつけたければ、別皿に酢醤油を作り、合間に漬け、また酢胡椒に戻ると、いっそううまい。

辣油を入れる場合は、箸で徹底的に混ぜる。油の粒が極少になるまで混ぜ込むと、舌触りよく、味が馴染む。

さらに辛さを欲する場合は、餃子に辣油をかけ、それを酢胡椒や酢醤油に漬けるという技もある。

さあ、こうして焼き餃子を楽もう。そして三つの命を、活き活きと舌に迫らせるのである。