「帰ってきたら、野菜が美味しいことに気づきました。若い生産者もいて、自慢できます」。
そう「レストラン高津」の高津シェフは、目を輝かせた。
下関といえば、魚である。
だが力のある野菜が、多いという。
そんな野菜を駆使した高津シェフの料理は、さりげない。
東京の料理人が羨むような、極めて質の高いサワラやクエを使いながら、どうだ凄いだろうというふうに、魚の力だけで攻めてこない。
サワラにはねぎの甘みを、クエにはグリンピースの甘い香りと優しい旨味を合わせて、肩をいからせない、穏やかな料理を生み出している。
野菜は付け合わせではなく、主役なのである。
野菜が魚の別な面を引き出し、魚が野菜の力を際立たせている。
野菜と魚の両雄が並び立つ料理なのである。
そしてコース半ばで出された、「白菜」の料理が素晴らしかった。
焦げるまでローストした白菜には、溶かしたロックフォールチーズがかけられ、クルミが散らされ、パルミジャーノが散らされる。
白菜の焦げがいい。
その苦みが、全体の味を引き締め、とろとろになった白菜の甘みを輝かせている。
焦げの苦み、白菜の甘み、ロックーフォースの酸味と錬れた塩気、くるみの香り、パルミジャーノの旨みという五味が、美しいバランスで配分され、その中でひときわ白菜の甘みが際立つよう計算されている。
一口食べるたびに、心が溶ける料理だった。
高津健一シェフ35歳、そしてスマートな料理への愛が感じられるサービスをする、梶山愼平さん25歳。
人口減少が止まらない下関に力を与えたいという、この若い二人の素敵な笑顔には、この地の未来が眠っている。
下関「レストラン高津」
帰ってきたら、野菜が美味しいことに気づきました
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