和歌山「オテル・ド・ヨシノ」
食べた。
唸った。
唸って、唸って、一人でほくそ笑み、首を後ろに垂らして、うっとりと虚空を見つめた。
これぞフランス料理である。
「かつて僕がフランスで食べて感動したフランス料理を、現代の食材で再現したかったんです」。
そう手嶋純也シェフは言われた。
手嶋シェフの作る扮す料理をいただき、感じたことは三つである。
1,まずどの料理も余韻が永い。ワインを流し込んでマリアージュし、口の中から料理が全て消えても、その味の優美は留まり続ける。
陶酔につながる余韻がずっと残っている。
さらには、単に味や香りが口腔や鼻腔に残るというだけではない。
感覚として心に染み込んでいく、たくましい余韻がある。
数日経っても忘れられず、あああれは美味しかったなあ、もう一度食べたいと思わせる、「残心」としての余韻がある。
余韻の長さがあってこそ、エロく、生命を食らう感覚があり、官能を勃起させるのである。
2.ソースが複雑で濃密なのに、澄んでいる。
深淵が見えぬほどうまみが深い。それなのに雑味が一切なく、さらりとしたさりげなさもあって、味が切れていく。
3.味わいが美しく、黄金比のような完璧さを誇るが、微かな微かな毒があって、おそらくそこが料理の麻薬性を高め、官能をを揺さぶる。
感覚なのだろうか、完全美の面白くなさを知悉したかのような、目には見えないカーブが、味わいを深くしている。
それではその前料理である
1) gougèreグジェール
2) Sangrier 和歌山仔猪のリエット
豚とは違う深き野味があり、それがトリュフと共鳴する、カチョカバロ。
小さいながら妖艶
3) Consommé 雉のコンソメ
これぞフレンチ!! 野生の複雑な旨味の濃さと純血感を感じる貴さが入り混じり、口腔にいつまでも残る。
飲んだ時にその純な感じとは違う、微かに引っかかる香りがあって、それがこのスープを虜とさせる。
聞けば、キジの脂だけに溶かして最後にかけているのだという。
ワインで流したくない。
キジのコンソメは何度かいただいたことはあるが、ここまでの圧倒感と透明感、そして危うさが同居したものには出会ったことがない。
4) Saumon Fumme à la Maison ソーモンフュメ アラメゾン
美しい。アンティーヴ、キュウリのヨーグルト和え、ケイパー
一度手嶋シェフのソーモンフュメを厚切りで食べてみたい。
5) Bisque de Becas 山シギのビスク FB参照
恐ろしいほどに素晴らしい。
一口飲んですぐに赤ワインをお願いした。
6) Loup de Mer 和歌山産ヒラスズキのパビヨット
ヒラスズキの凛々しい筋肉質の甘みが押し寄せる。トリュフにもバターにも負けない甘みであり、それが互いを響かせ合うのであった
菊芋、カリフラワー。
1) Tourteau ジビエのトゥルト FB参照
ピジョンラミエと古座川の鹿のトゥルト サルミソース
2) 口直し
3) Citron タルトシトロン
4) Mignardises