<油道15>ベーコンカツ

食べ歩き ,

なんでベーコンなのか。なんでベーコンを揚げようと思ったのか。一度聞いてみたい。

だってそうでしょう。ベーコンといえば、脂身が多いばら肉である。ソテーしたことがある人ならわかるが、相当量の脂が出る肉だから。脂に油という、暴挙である。

鹿児島には「バラカツ」といって、豚ばら肉のとんかつがあるが、そこからのヒントか。

あるいは単にベーコン好きなのか。

とにかく渋谷「凛花」のメニューを開くと、「鯖のお造り」、「マグロカマ焼き」などに交って、「THE厚切りベーコンカツ」(1260円)の文字が、燦然と光っていた。

それを見た瞬間に、油好き、フライ好きなら、もう居ても立ってもいられなくなる。

なにしろ、「THE」と定冠詞付である。自信のほどがうかがえるではないか。

店内を伺うと、いるいる。ベーコンカツに齧りついているお客さんの頻度がケッコウ高い。

頼めば、厨房で揚げている音が、聞こえ始め、さほど待つことなく、ベーコンカツは登場した。

厚さ二センチ強

堂々たるベーコンが、香ばしい衣に包まれ、断面に艶艶やかな脂を光らせて、早く食べろと誘ってくる。

早速一切れ口に運んだ。

サクッ。中粗の衣が音を立て、ベーコンに歯が食い込む。

いや喰い込まない。肉なら食い込むが、脂身が多いため、ふんわりと歯が包み込まれる。

抵抗感の弱いカツである。ただしそこから脂の甘みが広がる。燻製の香りが、ほんのり広がる。

その時我々は、ああ肉を食っていると、目覚めるのですね。

ご覧の通り、薄紅色の肉部分もあるが、食べている感覚では、脂、脂、ひたすら脂である。

しかしぶよぶよではない。締まって、口どけのいい脂なので、その柔らかさと衣の食感の対比がメリハリとなって、食べ進む。

最初はそのままで、次にソースそしてマヨネーズも試してみた。

ソースはいいが、マヨネーズはちょいとくどすぎる。それより黒胡椒をたっぷりかけるのがいい。

胡椒の刺激が脂の甘みを引き締めて、さらに旨味が増す、最適な組み合わせである。

その余韻を口に残したまま、すかさず冷たいビールか焼酎のロックを、くぃーっとやる。たまりませんぜ、兄貴。