鳥肌が

食べ歩き ,

鳥肌が、足元から頭のてっぺんに抜けていった。
「ル・ブルギニオン」の「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」である。
古典は、古典の品格と重厚を保ちながら、繊細でしなやかな表情も見せる。
血とワインと油脂と滋味が交じり合ったソースは、肉と舌を包み込み、どこまでも深淵で、滑らかで、丸い。
いくら形容詞を駆使しても表現しきれない神秘のうまさが潜んでいて、「はぁ~」と、充足のため息をつかせる。
大地を駆け巡ってきた野ウサギの、脂なき筋肉質の肉とエロティックな鉄分を滲ませる肝が、ソースと抱き合い、交じり合う。
そこにすかさず、コート・デュ・ローヌ・レ・ガリックを注ぎ込むと、肉とソースが艶を帯びて高揚した。
長い時間をかけて調理されたのにもかかわらず、生命の鳴動がある。
子孫を残すべきと懸命に生きて、樹皮や草、葉や小枝を食んでいた気配がある。
一噛みごとに、大地のありがたみを訴える。
その恵みを一旦分解し、再び集結させて、さらなる高みを描く、これがフレンチである。
和食では到達できぬ、狩猟民族の叡智がある。
料理を食べる興奮があって、そこには痺れるような、職人の技と感性が注ぎ込まれている。
完璧という言葉は使いたくはない。しかしここには、一切の緩みがない、揺るぎなき味が、静かに座っているだけだ。
古典に忠実でありながら、現代の感覚も自然に滲ませた、菊池美升シェフに感謝。