今年も多くの鮎をいただいた。
和食に限らず、イタリアンやフレンチ、中国料理でも出会うことができた。
だが塩焼き以外での鮎料理は、和食を超えることがないという思いは、変わらない。
そんな鮎料理で感じるのは、この魚の繊細さを汲み取ってないと感じるからである。
ただし、例外もある。
以前「エスキス」と「ラブランシュ」でいただいた鮎料理は、和食とは違う鮎の生かし方を教えてくれ、感動が伴ったのである。
「鮎の料理を一度食べにきてください」、
数年前から飯塚シェフに言われていて、今回ようやく食べることができた。
鮎を3枚におろして、骨は骨煎餅にして合わせて、中に肝のソース挟み、パートブリックで包み、ブランチャでにオイルかけながら焼いたものである。
なにより身がおいしい。
繊細でしなやかな甘さが生きていて、誰にも邪魔されずに清流で泳ぐ、鮎の尊厳に満ちている。
そのほのかなる甘さ、切なくなる香りこそ、水の国日本の宝であり、フランス料理であっても、我々の国への帰属意識を高める力を秘めている。
それをしみじみと感じさせるので、感謝の心がわく。
添えられたのは、炭焼き茄子のジュレで、鮎と合わせると、最後に炭の香りが抜けていき、炭火焼鮎の情景が頭の中に浮かんでくる。
さらに蓼酢のソースも、肝ソースも控えめで、ほのかにほのかに苦味や香りを伝えて、心憎い。
鮎の純粋に敬意を払い、料理人としての意欲やプライドを抑えて、生かす。
食べながら目をつぶれば、深山の清き川に身を潜める、あゆの姿が浮かんでくる。
フランス料理のダイナミズムに、日本の機微が生きた料理であった。
六本木「リューズ」にて