電球の黄色く柔らかい灯りの下

食べ歩き ,

電球の黄色く柔らかい灯りの下、酒と客の愛着が染みた卓が鈍く光る。
机の飴色に溶けゆく煮こごりの鼈甲を、少しずつ突き崩しなら、菊正宗の燗をやる。
ちびちびと、ちびちびと体を満たしていく幸せに、唇をかみしめる。
正月明けは、一人で居酒屋に行く。
もう10年も続けている習慣である。
しかし今回は、二人の友人を伴った。
お二人とも女性だが、男性以上に酒を飲み、食べ、笑い、人を気遣う。
食べることが大好きで、仕事や何事にも懸命で、気がまっすぐで、曲りがない。
だから飲む。しこたま飲む。
一軒では終わるはずもない。
入谷「鍵屋」から、湯島「シンスケ」に流れて、しめサバや、鳥肝のウースターソース煮に悶絶しながら、両関のたる酒を飲み、渋谷に流れる。
「高太郎」では、いづみ橋と七本槍の思いやりに満ちた味わいに顔を崩しながら、ポテトサラダとメンチカツをやる。
偶然にも「鍵屋」では、愛すべき呑兵衛、同じ誕生日である東京自由人K氏に出会い、
「シンスケ」では、一番ぶっ飛んでいる同級生Nに遭遇した。
これもどなたかの思し召し。
よき年になりそうな思し召し。