フランス料理を何百回と食べてきた。
シェフの料理も数十回は食べている。
なぜシェフが作るソースの酸味は、エレガントを生み出すのだろうと。
「シェフが作るソースの酸味は、もう一口へと向かわせる活力になります」。
常連の方が、そんな名言を言われたという。
いみじくも。
他のシェフが作るソースにも酸味はある。
だが彼が作ると、酸味がうまみに変身していく。
酸味が優美となって舌の上で舞い、官能を溶かす。
ああなんだろうこのうまさは?
そう思いつつ、もう一口を食べさせ、ワインを恋しくさせる。
この日いただいた、白ワインのソースも赤ワインを使ったポワヴラードソースもそうだった。
食べた瞬間に、体が骨抜きにされてしまう。
それはうまみという要素が、妖美に変わる瞬間であった。
Filet de Turbot braisé en croûte de fromage à la Viennoise
平目のブレゼのヴィエノワーズ、白ワインソース
Noisette de Chevreuil rôti, sauce poivrade
北海道 大雪山より蝦夷鹿のロースト、ポワヴラードソース
銀座「ラフィナージュ」にて。



