部屋に林檎が一つ。

食べ歩き ,

部屋に林檎が一つ。
もうそれだけで、部屋中がりんごの香りで満たされている。
鼻を近づけても、ほかの林檎より少し香りが高いくらいなのだが、大気中に香り成分を発散し続けているのだろう。
彼女はまだ生きている。
ヘタの部分ではない、お尻の部分を香ってみた。
するとどうだろう。林檎の香りが優しく、二歳児の女の子のような、柔らかい香りが漂っている。
切って食べてみた。
甘酸っぱい果汁がほとばしる。 そう。ほとばしる。
カプッっと噛めば、その個体は、瞬く間に果汁という液体となって、舌の上を流れていく。
果汁という、甘酸っぱいりんごの血液が、一瞬で弾けて流れていく。
そう彼女はまだ生きている。

幻の高徳りんご
高徳は、直径6cm程の小さな林檎だが、一部では最高峰の味と言われているという。中でも茨城県大子町は人気が高く入手が困難。冬は青森と同じくらい寒くなる大子町は、山間の盆地寒暖の差が激しく、他の林檎に比べ高徳は生産が難しく手間暇がかかるらしい。また1本の木になる実の量も少ない為に、育てる生産者も少なく、幻と言われている。千疋屋では、一個二千円以上1個2000円以上もする所もあるという。西野さんありがとうございました。