走るポトフ

食べ歩き ,

重い蓋が開けられると、ポトフがたぎっていた。
うずらのポトフである。
トマト、ジャガイモ、蕪 姫人参、芽キャベツ、ロマネスコ、ソーセージ、ベーコン、各種肉類も入って、ふつふつと煮え立っている。
「ハジメ」がプロデュースした、トワイライトエクスプレス瑞風の昼食である。
海辺のレストランでしっかり朝食を食べたというのに、観光で歩き回ったおかげで、お腹が空いている
花冷えのする外から車内に入って、このおもてなしは嬉しい。
なによりまず、前菜が素晴らしかった。
クスクスを立ち寄った鳥取砂丘に見立て、アニスのフォームをのせた海の幸のサラダなのだが、それぞれの魚介たちへの丁寧な仕事が光っている。
車海老もシャコも、タコもサザエも適切な火の通しで整えられていた。
「はい。一つずつ別に加熱しています。最初はなんでこんな手間をかけるのか疑問だったんですが、今はもう当たり前になって、スタッフ一同、そういう仕事をしないと許せなくなってしまいました」と、シェフは静かに言われた。
料理が人を育てる。
美しい言葉である。
「つながり」というテーマを冠したポトフは、里の野菜と肉類が昆布出汁の中で仲良く、気持ちよさそうに浸かっている。
山野草オイルと山陰マスタードをつけながら、ムシャムシャと食べ進む。
デセールの香川オリーブのアイスを食べながら、車外を見ると、ゲートボールをしていたおばあちゃんたちが、こちらに向かって手を振っていた。
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