若いのに、お主やるな。
おじさんの食いしん坊のツボを心得ているな。
「雷鳥のパイ」である。
胸、腿、レバー、心臓、脳みそを合わせて、パイに包み焼き、ソース・サルミとソース・アルブフェラを流してある。
一口食べれば、雷鳥となる。
冬でも高山に留まり生き続ける、雷鳥のしぶとい滋味が体を駆け回る。
それは血潮の味のようでもあり、土の味のようでもあり、かすかに果物の味のようでもあって、掴みきれない混沌の味わいが、野生の気高さを加速させる。
だから我々を高揚させるのだ。
自然を制圧したかのように思い、コーフンさせるのだ。
そしてこの輝く、色気を溶かした濃密なソースが加わって、夜を妖しくさせる。
渋谷「キャリエ」にて。
閉店