花山椒に思う

食べ歩き ,

花山椒の季節である。
今年は例年より早いという。
しかし、花山椒はいつからこんなに高くなってしまったのだろう。
この時期になると、方々で花山椒と牛肉のしゃぶしゃぶが出される。
何度かいただいたが、どうも釈然としない。
サシの入った牛肉と花山椒が、合うとは思えないのである。
自然と不自然が仲違いする違和感を感じて、おいしいとは思えない。
でもあれだけもてはやされ、喜ばれているからには、そう感じるのは、僕だけなのだろうか。
徳山鮓で熊肉と花山椒のしゃぶしゃぶを、何度かいただいた。
白と緑。
鮮やかな二つの色合いには、ウソがない。
熊肉の脂は、甘く、淡雪のように舌の上で溶けていく・
爽やかな香りが、脂に刺す。
人間の力が及ぶことのできない、自然の味である。
食べながら畏怖を感じる、自然の味である。
花山椒でもう一つ思うことがある。
花山椒の食感はいいのだが、木の芽に比べると香りも味も弱い。
力に欠ける。
だから食感の面白さは花山椒に任せ、山椒の山椒たる香りは木の芽にまかせなくてはいけない。
花山椒だけでは、腑抜けの味になってしまう。
徳山さんは、その辺りをわきまえ、木の芽をたっぷりと混ぜる。
こうしてこそ野生の肉と山椒は生きる。
ああ、ジビーフでやりたいなあ。