肉は身悶える

日記 ,

肉は、歯の間で身悶え、やがて千切れながら、自らの養分をじっとりと舌に広げていった。
真鴨としての猛々しい肉の滋味、血の香り、肝の養分、体液の甘み、そのすべてが渾然となって、口の中で渦を巻く。
何者にも汚されぬ、孤高なる自然の気品に圧倒される。
人間は自然と共生してきたのではない。
共立共生して生かされてきた。
そのことへの感謝と恐れを、噛みしめる味である。
自然を制圧した傲慢と畏怖が、同時に存在する味である。
それこそがフランス料理なのかもしれない。
真鴨の野生を残した精妙なキュイソンと、塩分をきっちりと効かせながらも丸く、複雑な旨みを湛えた作りたてのソースには、真鴨への真摯な愛が満ちていた。
唸る。ただ唸る。
人間と自然との関係を考え、冬への想いを深くする、それが「ル・ブルギニオン」菊地シェフの料理である。