続けてスッポン

食べ歩き ,

昼・夜・夜。
なぜか続けてスッポンを食べた。
「NARISAWA」の焼きスッポンは、雄々しい。
水の中でぬぼうっとしている亀とは思えないほど、凛々しい味が迫ってくる。
揺るぎない野生の凄みが味にあって、鼻息を荒くさせる。
レストランなのだが、もう箸もフォークも使ってられんとばかり、一同手で持って齧りつき、脇目も振らずにしゃぶって、骨だけを唇から抜き出して、皿に置くのであった。
荻窪「四つ葉」では、酒や生姜を使わずに、独自の手法でスッポンから臭みを抜いた鍋をいただく。
後ろ足の脂から始まり、濃い味の肩甲骨周り、ふわりと柔らかい味の首、胸骨周り、後ろ足より濃密な味をしたたらせる前足と食べていく。
スッポンの純な、純たる味に沈黙し、命の不思議に頭を垂れる。
そして体に満ちゆく幸せに感謝する。
そんな夜だった。
「今夜は冷え込んで寒いでしょう.まず熱いものであたたまってください」。
博多の「畑瀬」では、そうご主人が言って最初にスッポン鍋を出してくれた。
それも、肉より肝や心臓や、卵等、スッポンの内蔵がゴロゴロ入った鍋である。
スッポンの濃い出汁の中で、さっと火が通されたモツ類をいただき、すかさず熱燗を飲む。
体は上気し、脳はコーフンし、ご主人の思いやりが心に染みる。
おかげさまで今朝は、肌はツルツルではないですが、心身はピカピカです。