絵描きになりたかったというカルメさんは、今回のテーマを得た時、涌き出でるアイデアがと止まらなかったに違いない。
「楽しくてたまらない」。どの皿の上からも、喜びの声が聞こえてくる。
例えば、ルネ・マグリットの顔を持つ男からヒントを得た皿は、「ベルギー現実主義」と名付けられ、青リンゴの甘酸っぱさとセロリの香りの中からフォアグラの妖艶が顔出し、二面性の融合が見事にか輝き出す。
「アメリカ合衆国 ポップアート」と題された皿は、一口食べた瞬間に頭の中でニコが歌い出した。
アンディ・ウォーホールである。ヴェルヴェットアンダーグラウンドである。
アマダイの優しい甘みを、大根の淡い甘みが優しく包み、しっとりとした食感を、対比的なチップされたバナナが盛り立てる。
ポップアートの中に託された、人間同士の行為のように。
「カタルーニャ 機械的な詩」は、店に飾られているカタルーニャ出身の画家の作品「潜水艦」からヒントを得たものである。
ホセリート社イベリコ豚のプルーマ、ゴボウ、グリーンオリーブからなるもので、プルーマ独特のくりっとした歯ごたえがたまらない。
さらにピカソや村上隆のアートから引き出されたデザートへと続く。
絵画と料理は、それぞれの人の経験や感性、知識や洞察力によって、味わいが違ってくる芸術である。
絵画が視覚だけに頼るのに対して、料理は視覚、嗅覚、触覚、味覚を総動員させて感じる。
その中では、味覚が重要な要素を占めているかのように思われているが、実は視覚と嗅覚の情報の方が、はるかに美味に対する影響力は高い。
キュビズム、抽象主義、写実主義、超現実主義。
今回の「サンパウ」は、すべて絵画にヒントを得たコーズであり、まさに食べる前に、視覚だけで高揚させられる料理なのである。