どうしてこの人が手を加わえると、料理がエロくなるのだろう。
徳山鮓での、徳山さんと高良シェフのコラボである。
例えばこのパイである。
バイ生地の上に野菜を乗せて焼き上げ,高良シェフのトマトソースに徳山さんの飯クリームを合わせる。
上は、徳山さんの猪の生ハムと山椒のピストゥである。
飯クリームを隠したぎりぎりの量が憎く、途端にワインが恋しくなるのです。
例えば「イワナの米麹ソース」である。
徳山さんが焼いたイワナに、高良さんのソースを合わせる。
米麹はとたんに,野暮ったさを捨てて,エレガントに変身して、我々を陶然とさせるのです。
例えば、「鰻のマトロート」です。
本来フランス料理では、丸ごと筒切りですが、徳山さんが開いて焼いたものに赤ワインソースを合わせました。
皮と皮下を見事に焼き切られた鰻を、深くキレのあるうまみと酸味を湛えるソースが包みこむ。
すかさずボジョレーの赤をあわせれば、鼻息が荒くなるのです。
例えば鴨ココット焼きです。
徳山さんが用意した鴨に鮎の魚醤を塗り,黒文字と共にココット焼きにしたものですが,なによりキュイソンが完璧でした。
芯まで熱々で,肉を食らう喜びがある。
命への感謝が生まれる。
歯で肉を断ち切る時に,コーフンが高まる。
月に照らされた余呉湖の、群青色の空を眺めながら、目の前の女性を口説きたくなるのです。
「徳山鮓」にて。