京都「殿田」

真冬のけいらん <京都の平生>53

食べ歩き ,

溶き卵が、うどんにしなだれる。
葛あんが、うどんにまとわりつく。
僕は、ふうふうと息をかけながら、すすり込む。
玉子の甘みがやってきて、出汁の旨味が広がり、その中を楚々としたうどんが登っていく。
ぬるん。てれん。
たまごや葛あんの粘りが、唇を優しく撫でる。
生姜を溶けば、体を熱くし、ネギとすすれば、鼻を元気にする。
玉子、葛あん、うどん、生姜、ネギ。
五つのものが織りなす小宇宙が、永遠を作り出す。
真冬の「けいらんうどん」には、慈愛がある。

京都「殿田」にて。